2020年8月、香港のオークションで山崎55年が手数料込み8,456万円で落札され、日本でも大きなニュースになったことを覚えている人も多いでしょう。定価330万円のウイスキーが発売から2か月弱で25倍です。
では、そんな逸品は現在いくらになっているのでしょうか?
私は山崎55年の抽選販売に当選した100人のうちの1人で、当時は色々な人から買取の申し出を受けたりしていました。この記事では2020年から2026年までの落札価格を並べて、あのブームがどう終わったのかを見ていきます。
2026年11月時点のまとめ
- 2026年6月のクリスティーズは入札1回で落札額は約3,209万円
- 2020年のピークと比べると円では半分以下、ドルでは3分の1以下
- 35万ドルを超える入札でもオークション不成立
- それでも定価330万円の約9倍の価値
- 私は2020年11月に売却済み
落札額は6年でどこまで下がったのか
報道される金額は手数料込みのものとハンマープライス(落札価格)が混ざっているので、ここではハンマープライスにそろえて並べます。手数料の仕組みは下の記事で詳しく書いています。
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8500万円で落札された山崎55年でオークション出品者はいくら儲かるのか
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| 時期 | オークション | 落札額(ドル) | 円換算 |
| 2020年8月 | Bonhams(香港) | 645,125 | 6,820万円 |
| 2021年11月 | Whisky Hammer | 506,953 | 5,826万円 |
| 2022年6月 | Sotheby's(ニューヨーク) | 480,000 | 6,395万円 |
| 2023年3月 | Sotheby's(パリ) | 343,129 | 4,571万円 |
| 2024年7月 | Sotheby's(香港) | 256,162 | 4,143万円 |
| 2025年6月 | Bonhams Skinner(ボストン) | 200,000 | 2,882万円 |
| 2026年6月 | Christie's(ニューヨーク) | 200,000 | 3,209万円 |
円換算は開催日の三菱UFJ銀行の仲値を使いました(2020年は500万香港ドルから換算)。主な落札を抜き出した表で全ての取引ではありません。
米ドルで見ると最高64.5万ドルが直近は20万ドルということで3分の1以下です。日本円で見ると半分を少し割る程度で済んでいるのは、1ドル105円台だった為替が160円台まで円安になったからです。日本円の数字は海外の買い手が感じている下落よりかなり甘く見えています。
定価の25倍がついた2020年の異様な空気
今振り返っても、コロナ禍の2020年夏は異様でした。配送されてきた7月には買取不可と答える業者があったのに、8月の香港の落札を境に10月には同じ業者が2,500万円を提示してきたくらいです。
その後も相場はしばらく崩れず、2022年6月のサザビーズ・ニューヨークでは手数料込みで60万ドル(報道ベースで8,100万円)がつきました。これが2度目の山で8,000万円台の落札はここが最後でした。
ちなみに「1億円」という数字もよく見かけますが、これは販売店などの言い値です。オークションで1億円の落札は確認できていません。
ジャパニーズウイスキーのブームはなぜ終わったのか
下がった理由は1つではありませんが、私は次の3つが効いたと見ています。
- 海外向けの山崎55年100本が追加された
- 中国がけん引してきたウイスキー相場が終わった
- 世界的な金余りが終わった

まず、2021年9月に海外向けの100本が定価6万ドルで発売されました。「世界に100本」の希少性を買っていた人にとって、本数が倍になった影響は小さくなかったでしょう。750mlの海外版は今のオークションでも普通に出てきます。
次に、中国景気の陰りとともにレアウイスキーの市場全体が下がってきました。不動産会社ナイトフランクの指数は2023年から3年続けてマイナスで、ジャパニーズウイスキーは2022年のピークから55%下げたという集計もあるそうです。山崎55年だけが嫌われたわけではないということでしょう。
最後は金余りの終わりです。2020年に私が「インフレヘッジの現物資産として価格は維持される」と書いたとおり、当時の買い手には投資・投機マネーが多く含まれていました。金利が上がれば、利息を生まないウイスキーを高値で持ち続ける理由は薄れます。値上がりを前提に買った人が売る側に回れば、投資商品としてのウイスキー相場は崩れて当然でしょう。
入札1回、そして流札が続くオークション
今の相場を一番よく表しているのは、落札額より流札(オークション不成立)です。オークションには売り手が決めた最低落札価格(リザーブ)があり、そこに届かないと取引は成立しません。
山崎55年は2022年12月を皮切りに、2024年だけで4回もイギリスの専門オークションで流札になっています。2026年6月にはWhisky Auctioneerで35万ドルを超える入札があったのに、それでもオークションとしては流札になりました。
同じ月のクリスティーズはもっと象徴的です。目玉として出品された山崎55年の予想落札価格は24万〜35万ドルでしたが、入札はたった1回の20万ドルで落札されました。2020年にBonhamsの会場とネットの競り合いで値段が吊り上がっていく様子をライブで見ていた身としては寂しい限りです。
売り手は昔の値段を忘れられず、買い手は現実的な安い値段しか出さない。これがバブルの終わったあとの相場です。
一方、販売店の言い値はまだ強気です。海外の専門店では44万〜62万ドルの掲載があり、楽天市場でも4,980万円の出品や、システム上限の99,999,999円にした問い合わせ用の出品が残っています。ただ、これは売れた価格ではありません。オークションハウスの悲しい結果と見比べてみてください。
6年前の私の予想は当たっていたのか
ここで当選者である私の予想(ポジショントーク)の答え合わせをしておきましょう。私は当選直後の2020年4月に、山崎55年の落札価格を「短期的には3,500〜4,500万円」と予想しました。
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山崎55年に当選しました!買取価格・市場価値はいくらになる?
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その4か月後に8,456万円がついて、この予想は「思いきり外した」と反省する羽目になりました。さらに、「ピークアウトしても価格は比較的安定して推移する」という読みも見事に外れています。
2025年のBonhams Skinnerの手数料込み25万ドルは日本円で3,603万円です。短期どころか5年かかって相場が当時の予想の範囲に戻ってきました。
言い当てたと言える話ではありませんが、山崎50年の落札実績から素直に出した数字に落ち着いたのは面白いですよね。予想を大きく超えた8,456万円のほうが熱狂の値段だったということでしょう。
私は2020年11月に売っていました
過去の記事では「売却する予定はない」と書いていましたが、その後事情が変わり、私は2020年11月に国内の購入希望者へ完品で売却しました。香港のボナムズのオークション落札価格8,456万円から3か月後のことです。
2022年にもう一度山が来たので天井で売れたわけではありません。それでも、流札が続く今の相場を見るといいタイミングで手放せたと思っています。
売却金額と売却先の大まかな情報は、当選した作文と一緒にnoteにだけ書いています。ここには書かないので、興味がある方はそちらをご覧ください。
サントリー山崎55年の抽選販売に当選した作文を有料で公開します – note
今売るなら海外オークションと国内業者のどちらか
最後に、山崎55年を持っている人が今売るならどうするかです。2020年は海外オークションの数字が国内の買取価格を大きく上回っていましたが、今は逆転しています。
| 売り先 | 目安 |
| 海外オークションハウス(手取り) | 約2,500〜2,900万円 |
| 国内の買取業者(掲示額) | 4,500万円前後 |
オークションの手取りは、2025年と2026年のハンマープライス(2,882万〜3,209万円)から出品手数料を10〜15%引いた金額です。流札のリスクもあるので、わざわざ海外に出す理由はないと言えるでしょう。
ただ、業者の掲示額はあくまで広告の数字です。上限の価格を見せて問い合わせを集めている面もあるようです。2020年に私が見積もりを取ったときも、1,000万円から4,500万円まで開きがありました。この価格で本当に買うのか、1社で決めずに必ず複数の見積もりを取りましょう。
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ウイスキー山崎55年の転売価格を調査した結果(2020年11月現在)
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熱狂は終わっても定価の約9倍
ここまでピーク比で下がったと書いてきましたが、それでも落札額の3,000万円前後は定価330万円の約9倍です。海外版の定価6万ドルと比べても3倍以上あります。バブルは終わっても世界に200本しかない山崎55年の価値まで消えたわけではありません。
これから山崎55年の相場がどこで止まるのかは、私も楽しみに見守っていきたいと思います。実物の写真や付属品が気になる方は、下の記事も読んでみてください。
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