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ラペル(えり)が波打たないスーツのジャケットとは

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メンズのビジネススーツ

 

以前、スーツのラペル(Lapel, えり)の部分が波打ってしまった場合、どのような原因と対処法があるのかを記事にしました。

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スーツの襟(ラペル)がシワで波打ってるときの対処法は?

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まず、ラペルが波打った(ピリついた)状態になってしまう原因ですが、これはケースバイケースで色々と考えられます。

  1. 生地の伸縮によるもの
  2. 接着芯地の癒着の剥がれ
  3. 仕立ての問題

 

ただ、「仕立て直す(修理)」以外は「できてしまった場合、一時的な改善しか対処法はない」というのが結論でした。

ピリが出ているラペル

 

そこで今回は、そもそも「ラペルが波打たないようにする方法」をテーマにして、どのような方法があるのかを紹介したいと思います。

どちらかというと、ピリを予防するというよりも、波打ちにくいジャケットとは?というのが今回の内容です。

スーツに耐用年数はあるのか

まず、そもそも「スーツの耐用年数」について触れておきましょう。

日頃ケアしながら着用していれば、スーツの流行り廃りは別にして5年くらいはもつという人もいます。

ただ、どれくらいのペースで何着を着まわすのか、内勤・外勤などの着用シーンなど、人によって違うのでスーツの耐用年数は一概には言えません。

 

使用・経年による一定のヨレは避けられません

これはラペルに限らず、どんなスーツにも言えることです。

やはり使用や経年によるダメージは避けられず、クリーニング直後はキレイでも、少し着用しただけでヨレや型崩れが目立つようになってしまうのは避けられません。

他にも袖やスラックス全体にテカリが出てしまったり、長く使うほど気になるところは出てくるのは当然です。思い当たるスーツをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

これについては仕方がないので、スーツの寿命だと思って新しいスーツを新調しましょう。

 

ラペル(えり)は「折り返し」もポイント

今回の本題であるラペルについては、耐用年数やピリの話とは別に「折り返し」も非常に重要な要素です。

身頃からの折り返しが、ボリューム感・立体感のある「ふんわり」ではなく「ペタン」としてしまったジャケットでは、いくら高級でもキレイにしていても安物に見えてしまいます。ラペルはドレープが非常に重要な部分です。

これは保管方法とケアで簡単に防止・改善できるので、常に立体感ある折り返しになるようにしておきましょう。

  • 折り返しに立体感がなくなったら、ラペルの折り返しの裏側からスチームアイロンを当てます(裏側なので当て布は不要です)
  • ジャケットを保管する際、つぶれないように十分なスペースを設けましょう
  • ラペルを潰すようなアイロンを当てているクリーニング店は使わないようにしましょう(ないと思いますが…)

毛芯を使って仕立てたスーツであれば、自然とボリューム感のあるキレイな襟元になります。

反対に、接着芯で仕立てたスーツの場合、生地と生地がくっついているだけため、どうしてもペタンとしやすくなっています。

これについては、常に意識してボリューム感を作るか、半毛芯でも総毛芯でも毛芯を使ったジャケットを仕立てることで対応できますね。

ラペルが波打ちにくいスーツのジャケット

それでは、実際にラペルが波打ちにくいジャケットについて、考えられる条件を挙げてみたいと思います。もちろん、ジャケットを大切に扱うことは大前提です。

  1. ラペルにAMFステッチを入れる
  2. 半毛芯(ハーフキャンバス)・総毛芯(フルキャンバス)で仕立てる

聞き慣れない単語かも知れませんが、どちらもワンランク上のスーツでは標準的な仕様です(既製品を除く)。

要するに、「ある程度の水準のスーツであること」というのが、「ラペルが波打ちにくいジャケット」の必要条件です。ただし、「ある程度の水準のスーツ」は十分条件ではないため、単純に高価であれば良いというわけではありません。個人的には、既製品は値段と品質がキレイにはリンクしないと考えています。

それでは、一つ一つ見ていきましょう。

 

AMFステッチ(ピックステッチ)

AMFステッチ(AMF Stitching, ピックステッチ)とは、カラーとラペルのエッジに手縫い風の縫い目を入れる仕立ての方法です。

高級なスーツでは定番の装飾ですが、本来の目的はラペルを落ち着かせ、形をキレイに保つことができるというものです。オーダースーツの仕立て屋によっては、まさに「ラペルをキレに保つ」という目的でAMFステッチを入れているところもありますね。

AMFステッチの入ったラペル

しかし、AMFステッチを入れることは一つの方法ではありますが、その仕立てが雑だとステッチの縫製に起因するピリつきが出てしまいます。

生地を縫い合わせたとき、縫製部分が波打つというのは感覚的に分かる人も多いのではないでしょうか(縫ったあとに糸を強く引くと生地が波打つイメージです)。

そのため、「AMFステッチ(ピックステッチ)を入れれば波打たない」という話ではないことに留意してください。

 

毛芯を入れた仕立て

次はジャケットの芯地に毛芯(けじん, Canvas)を使っているかです。

下記の図でスカイブルーの部分が毛芯です。図はラペル部分が折り返されていない状態ですが、「総毛芯(FULL CANVAS)・半毛芯(HALF CANVAS)・ラペル部分のみ毛芯(PADDED LAPL)」にはラペル部分に毛芯を入れていることが確認できます(左から3つです)。

総毛芯仕立て・半毛芯仕立・接着芯仕立て

 

百貨店や量販店などで売られている既製品は、大多数が右端の"FUSED"の図のように毛芯のないもので、それらは接着芯と呼ばれる生地と生地を接着剤で貼り付ける仕立てです。

TAKEO KIKUCHIでラペルを除いた前身頃に半毛芯の入ったスーツ(10万円程度)があり、私のお気に入りでしたが、なぜかラペル部分は接着芯だったので経年によりピリついてしまいました。接着芯の宿命ですね。

一方、総毛芯・半毛芯のように前身頃(まえみごろ)に毛芯を使っているものは、生地と生地の間に麻や馬毛(髭や尻尾)で作られた毛芯を挟み、生地と毛芯をハ刺しと呼ばれる縫い方で細かく縫い付けていきます。

毛芯・接着芯の断面図イラスト

良い仕立てとは - オーダースーツ専門店 ringwood

 

これは手間と時間と技術が求められる部分で、この作業が不要になる接着芯が「ミシン登場以来の革命」と言われる由縁でもあります。

 

毛芯があるラペルは別格です

色々な原因で接着剤の剥がれに起因する波打ちが起こる接着芯とは異なり、毛芯と生地が縫い付けられているラペルは構造的に波打つことが少なくなります。

接着芯のような接着剤を使わずに縫製しているので、高熱のアイロンプレス・ドライクリーニングの有機溶剤・湿気(雨)で癒着が剥がれるようなことはありません。湿度で生地が伸縮するウールであっても、毛芯自体も伸縮するため、生地のヨレや型崩れが起きづらくなっています(接着芯の場合、接着面が生地の伸縮で引っ張られる形になります)。

また、総毛芯・半毛芯のようにラペルの折り返し部分にも毛芯がある場合、ふんわりとした立体感(ドレープ感)のある折り返しになり、一見するだけで高級なジャケットであることを感じさせますね(実際の価格は別にして)。

ただし、「毛芯を使ったラペルは絶対にピリが出ない・波打たない」というわけではありません。愛情をもって扱ってください。

他にも、芯地のあるスーツは「時間が経つと体に馴染む」などと言われますが、これに関しては個人的にテーラーの売り文句だと思っています。腕のいいテーラーが仕立てたオーダーメイドのスーツは、基本的に最初から素晴らしい着心地ですし、むしろ身体が着心地に慣れるという精神的な側面のほうが大きいのではないかと考えています。何でもかんでも称賛すればいいというものでもないでしょう。

 

接着芯地のヨレ・波うちは避けられません

接着芯地は合成樹脂などで作られた接着剤で生地を貼り合わせていますが、これはジャケットのラペルが波打つ最大の原因です。

新しいスーツでラペルが波打ってしまったとしたら、それは接着芯地の癒着が剥がれたことによる可能性が高いと思われます。特に、直近でドライクリーニングに出していたりしないでしょうか。

接着芯地は加熱して接着させているため、クリーニング店で高熱なアイロンでプレスすると癒着が剥がれます。また、ウール素材に使うドライクリーニングの有機溶液も癒着を剥がしてしまう要因です。そのため、クリーニングはワンシーズンに1回の頻度が理想で、クリーニングよりも日々のケアを大切にしてください。

接着芯が剥がれることによるラペルの波うちは、クリーニングに出しても一時的な見た目の改善で、またすぐに目立ってしまう対処療法でしかありません(むしろ、接着芯の観点からは悪化している可能性もあります)。

スーツの値段に関わらず、接着芯のスーツにおけるピリつきは覚悟せざるを得ないでしょう。

 

選ぶなら毛芯仕立てのジャケットの一択

既製品の毛芯仕立てはあまりお目にかかれませんが、ジャケットを選ぶ際は前身頃(少なくともラペル部分)に毛芯があるものを選ぶことをオススメします。

冒頭にも書きましたが、ラペルは折り返しも重要な部分です。ラペル自体がキレイに保たれていても、折り返しが潰れてペタンコな状態では「品のあるジャケット」には全く見えません。もちろん、折り返しは立派でも、波打ったりピリついたラペルでは、実際の値段に関わらず安物感を与えてしまいますね。

これらを踏まえて、スーツのジャケットは総毛芯・半毛芯を第一に選ぶことを基本にしましょう。

総毛芯と半毛芯のイメージ図

 

毛芯があるジャケットのスーツというのは、なかなか既製品では出会えないため、基本的にはオーダーメイドになると考えてください。

オーダーメイドになると価格はスーツ量販店の価格ではありませんが、想像しているほど高くなく、Calvin Kleinなどの有名ブランド(ラグジュアリーブランドではありません)のスーツと変わらない値段で作ることができます。イメージ的に半毛芯で上下8万円~で、総毛芯で上下9万円~といった相場ですね。

ちなみに、既製品は袖や丈などの「タテ」は調整できますが、デザインや型の関係で「ヨコ」は基本的に調整できません。

その点で、完全に自分の体形に合せて作ることができ、さらにラペルの波うちのような余計なことを気にせず、オーダースーツは長く着ることができます。コストパフォーマンスの面において、最終的には割安に感じられるはずです。

ポイント

オーダースーツは、完成を心待ちにして「待つ」ことが重要です。どのような触れ込みであっても、「最低でも1ヶ月はかかる」と思ってください。私はこの納品までの期間も信用の証でもあると考えています。下記のように仮縫いがある本格的なオーダーメイドの場合、時期によっては2ヶ月かかっても不思議ではありません。
スーツのオーダーが初めての方へ|ゼニア認定 オーダースーツ専門店スプレーモ

 

信頼できるテーラーの見分け方

特定のテーラーを悪く言うつもりはありませんが、基本的に「スーツについて詳しく解説しているテーラー」で仕立てるようにしましょう。スーツへのと仕立てへの誇りが感じられるテーラーが一番です。

というのも、仕入れルートによる値段や品揃えの違いはあれど、生地の品質に差はありません。生地こそ、どこで買っても同じ既製品です。

Ermenegildo Zegna(ゼニア)の生地サンプル

 

そのため、その生地を生かすも殺すもテーラー次第で、「安さ」「オーダーメイドの素晴らしさ」「生地の品ぞろえ」「受注実績」だけが全面に出ているテーラーは、私の経験からしてイマイチです。

同じくらいスーツ自体の説明にスペースを割いているテーラーこそ信頼できます。この記事で書いた「芯地」について詳しく書いているテーラーも多くあり、そのようなテーラーでオーダースーツを作ることをオススメします。

ただ、サイトが充実しているというのも一つの指標でしかなく、仮縫いのオプションがある(または基本としている)テーラーは総じて高品質です。その分だけ価格も上がりますが、フルマシンメイドで工場にデータだけ送るだけのテーラーとは一線を画していると言って良いでしょう。

 

ご参考までに、下記は私がサイトを見ていてスーツを作ってみたいと思ったテーラーです。

 

オーダースーツは作るごとに自分のこだわりが見えてきて、求めている理想に近づいていけるものです。

私の経験としては、オーダースーツでは「ケチらないこと」が最も重要です。安さには理由があり、歴史的には衣服を大量生産できるようにした「接着芯」が挙げられるでしょう。

現代でも構造は変わらず、接着芯以外にもCAD・マシンメイド・海外生産など、どこかしらで「安さ」を実現できる理由があり、それは自分のこだわりの実現を阻害する要因になりかねません。

この記事を読んでいただいているということは、少なくともラペルに気になる部分があったということだと思われますが、それは恐らく「安さ」の理由の一つである「接着芯」に起因するものでしょう。

繰り返しますが、オーダースーツを考える際は「ケチらないこと」を前提にすることで、良いテーラー・良いスーツに出会うことができます。

高価なスーツでも一生ものにはなりませんが、着ていることで自分に自信が持てるような一着をぜひ手に入れてください。

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