糖質カットのためにビールを控えている。ビールは太るから、最近はワインやウイスキーを飲んでる。アルコールのカロリーは太らないから大丈夫。
私の周りにも色々なことを言っている人がいますが、いったい何が正しいのか分かりますか?
アルコールで太る太らないの話をしている人は、「お腹だけ部分痩せする」のように何か勘違いしているかも知れません。
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「正しいダイエットは正しい知識から」ということで、今回はアルコールとダイエットの関係について説明してみたいと思います。
飲酒(アルコール)は太るのか?
結論としては、お酒を飲めば含まれるカロリー分だけ太ります。ビールだろうチューハイだろうと同じです。
ただ、それ以上に「お酒」には太る要素があるので注意してください。
アルコールに含まれるカロリー
アルコールのカロリーは「エンプティー・カロリー(Empty Calories)」と呼ばれ、三大栄養素(タンパク質・脂質・糖質)のような身体に貢献する栄養素がほとんどありません。多くのアルコールに少量含まれるビタミン・ミネラルも同じです。
これは、「カロリーがエンプティー(空っぽ = ゼロ)」や「吸収されないカロリー」という意味ではなくて、どれだけ摂取しても「栄養として無価値」という意味です。
非常に重要な点なので勘違いしないようにしましょう。そもそも、アルコール自体は高カロリーです。
参考
タンパク質(Protein)と糖質(Carbohydrate)は1gあたり4kcal、脂質(Fat)は1gあたり9kcal を含みます。アルコールは1gあたり 7kcal です。
数字だけ見ると、アルコールはタンパク質・糖質よりも高カロリーで、むしろ脂質に近い高めのカロリーがあります。
下図は1Pint(1パイント=473ml)のビールの例で、大きめのピザ1切れと同じ 197kcal あるというのが残念な事実です。そして、栄養としては全く価値がありません。
「ビールはエンプティ・カロリーだから飲んでも太らない」なんて、バカげた話があるわけありません。
なぜ飲酒すると太るのか(からだの仕組)
それでは、なぜ人は飲酒することで太ってしまうのでしょう。アルコールに含まれるカロリーのせいだけでしょうか。
もちろん、アルコールによるカロリー摂取が直接的な原因の一つですが、太るように感じるのは「アルコールのカロリーが優先して使われてしまう」というのが本当の理由です。
私たちの身体は食事をすると栄養素を吸収して蓄積しようとしますが、アルコールは蓄積することができません。そのため、早く分解して身体から取り除こうとします。その働きは優先順位が高く、そのアルコールに含まれるカロリーは他よりも優先してエネルギーとして使われることになります。
カロリーを消費する基礎代謝・活動代謝・食事誘導性熱産生(食事によるエネルギー消費のこと。Dietary Induced Thermogenesis, DIT)は、本来は食事で摂取したカロリーや脂肪・筋肉を分解して取り出されるエネルギーが使われます。しかし、アルコールを摂取すると、身体はそれらのエネルギーよりも優先してアルコールのカロリーを利用することになります。
要するに、本来は食事や脂肪・筋肉の分解で取り出して使われるエネルギーが少なくなるため、本来は減るはずのカロリーが脂肪として身体に残ってしまうというわけですね。
そして、多くの場合は一緒に食事をすると思います。そのときに消化で発生するDITは1日の代謝の10%程度を占めますが、アルコールを摂取するとそのエネルギー源は脂肪の分解・燃焼(場合によっては筋肉の分解)ではなくアルコールのエネルギーを使ってしまいます。
飲酒すると体がホカホカとしてくることからも、ここで熱(エネルギー)が発生していることは明らかですね。
なぜ飲酒すると太るのか(食事の面から)
では、なぜ「お酒を飲むと太る」と言われるかですが、アルコールだけが悪いなんてことはありません。「アルコールと一緒に食べる食事」にも大きな原因があります。
そもそも、脂肪を燃やさず分解したアルコールのエネルギーが優先して使われてしまう状態にも関わらず、一般的にお酒と一緒にとる食事は高カロリーなものが多いですよね。これが諸悪の根源です。
お酒のお供には、味の濃い・塩気の多い・脂っこい高カロリーな料理が合いますよね。サラダだけで何杯でも飲むのは苦しいでしょう。この高カロリーが、脂肪燃焼ではなく分解したアルコールのエネルギーが優先して使われている体に入ってきてしまうわけですね。
ダイエットをしている人なら分かると思いますが、代謝が落ちている体にカロリーを大量に注ぎ込んでいるイメージです。誰でも太るでしょう。
ダイエット中はお酒と上手に付き合いましょう
世界を見渡しても日本人はお酒が好きな国民のようです。
下図は「過去1年間に国民の何%がアルコール摂取したか」を色分けしたもので、色が濃い国のほうが割合が多いというものです。
これを見ると、日本はヨーロッパ・カナダ・オーストラリアなどよりは薄いものの、アメリカやロシアと同じくらい色が濃いことが分かります。実際の数値を見ると、日本は男性76%・女性61%が1年間に飲酒したというデータのようです。
一方、「1年間にどれくらいのアルコールを飲んだか」というデータを見ると、反対に日本は上位グループではないということも分かります。
これは純粋なアルコール量で換算したものなので、ビールの消費量が多い日本よりも、ワイン・ウイスキーなどのアルコールが高いお酒を飲む国が上位に来ているようです。ロシアはウォッカの影響でしょう。
この2つのデータだけ見ても、日本人の多くは飲酒するものの、極端に大量のアルコールを摂取するわけではないという姿が見えてきます。
アルコールはダイエットの敵!?まとめ
最後に重要なポイントを振り返っておきたいと思います。
- お酒(アルコール)には脂質に次ぐカロリーがあり、栄養素がないだけで飲んだ分だけ太ります
- アルコールのエネルギーが優先して使われ、本来は脂肪燃焼などで取り出されはずだったエネルギーが相対的に減少してしまいます
- アルコールと一緒に食べる高カロリーな食事も太ってしまう大きな原因です
上記だけを見るとアルコールを飲むのが怖くなりそうですが、ダイエット中であってもアルコールを絶つ必要はありません。事実を理解したうえで、飲酒量を自制したり、お酒のお供を低カロリーな食事に変更するなど、工夫しながらお酒と付き合うことが重要でしょう。
ただし、消費カロリーが摂取カロリーを上回らない限りは痩せることはありません。都合のいい部分痩せもありえません。
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毎日のようにアルコールを飲んでいたりしたら、相当な工夫や努力がなければ「消費カロリー>摂取カロリー」は実現できないでしょう。